東京地方裁判所 昭和58年(ワ)3099号 判決
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【判旨】
そうすると、被告が本件建物を取り壊したことにより、原告は本件担保権の目的である本件建物と本件土地についての本件作業用建物所有を目的とする賃借権を消滅せしめられたものと言うことができ、これが原告の損害であるということになるが、それは原告が本件担保権を実行することによつて回収が見込まれる債権額を限度とするところ、これを具体的に算出するとなると、いくつもの複雑かつ困難な要素が絡んできておよそ不可能と言つても過言ではない程である。即ち、(イ)原告が訴外会社の倒産後も本件担保権の実行に着手しなかつたということも手伝つて、本件証拠中には右算出に資するような資料が少なく、(ロ)また、今更そのような資料を求めようとしても、現に評価の対象となるべき本件建物が存在しないという事情がある上に、(ハ)本件土地の賃貸借契約については、(a)被告と訴外会社との間に前記2のような紛議が生じていた(しかも本件担保権はその後に設定されたものである)ことや(b)賃借人である訴外会社が倒産したことに関して民法六二一条の規定の趣旨をある程度考慮しなければならないなど、その将来に関わる浮動的な要素があることを無視し得ないのである。
しかしながら、そうだからと言つて安易にこれを算出不能として処理してしまうようなことは、本件事案の性質に鑑みれば決して妥当な態度とは言えず、あくまでこれを算出する努力をすべきものと考えるが、前記のような困難がある以上、結局は本件全証拠及び弁論の全趣旨を勘案して当裁判所の裁量によりこれを決することで満足するほかはない。
そこで判断するに、<証拠>によれば、訴外会社は昭和五五年八月に本件建物の保存登記をしたものであるが、その時点において本件建物の評価額を三六七万三〇〇〇円と把握していたことが窺われ、<証拠>によれば、本件建物は固定資産課税台帳上は昭和五七年に八四万〇八〇〇円と評価されていることが認められ、<証拠>によれば、本件建物の事務所部分には天井もあり壁にはベニヤの化粧板を使用していたことが認められ、更に<証拠>によれば、都税事務所は本件土地の価格を昭和五七年、五八年とも四四一三万五九八〇円と評価していたことが認められるのである。しかし、他方で、<証拠>によれば、本件作業用建物は昭和五四年に一七万二一〇〇円と評価される程度のものであり、逐年減価を免れないものであつたことが認められ、また<証拠>によれば、被告と訴外会社との間の本件土地賃貸借契約においては前記認定の資料のほかは権利金その他名目の如何を問わず被告に対し何らの対価の支払もなされていないことが認められるのであり、これらの事実に前記(ハ)のとおりの浮動的な要素があることをも総合して考えれば、本件建物等の評価としては原告が本訴請求の前提として主張する程に高く評価することは到底できず、合計一二〇万円とみるのをもつて相当と考える。
(西理)